甘く黒く黒く甘く
FFTの絵を描き散らかすブログ。
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鷺沼

Author:鷺沼
関節に鎧を着たら動けないだろ、常識的に考えて・・・。



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だいぶ前に
スレに投下したSSが発掘されたので加筆修正してみる。
4700字程度。

夜の帳は光を閉ざしても、音までを閉ざすことはない。隣の酒場からは賑やかな声が聞こえて来る。明日をも知れぬ戦いに身を置く俺たちが、わずかに血腥さを忘れられる時間だ。笑い声の裏で、自分の置かれた立場を考えていない奴はいない。誰もがそれを弁えた上で、自分の心を慰めるこの時を大切にしていた。酒を口にしないラムザでさえ、そのことはわかっている。かりそめの、それでいて心からの笑い。
この扉の先には、それに入らぬ人物がいた。
俺は2度ノックをした。返事はないが、扉から明かりが漏れていた。このご時勢、燃料の浪費はどこの宿も目を光らせている。まだ眠ってはいないだろう。
「入るぞ」
ドアを引くと、安物のドアが細い音を立てた。2m四方の狭い部屋は、その約半分をベッドが占めている。他には、テーブルと言うにはあまりに小さな台が1つあるだけだった。
「起きてるなら返事くらいしろよ。具合は?」
彼女はベッドに半身を起こして座っていた。彼女の頭部、そして左腕には包帯が痛々しく巻かれている。衛生的に満足できるものは貴重品だった。
「すまん。大丈夫だ。」
ややハスキーな声で彼女――以前は王女の護衛だった騎士――アグリアスは答えた。結わえていた髪を下ろし、鎧を外すと、彼女の印象はだいぶ異なる。剣のような眼光も、今はない。
俺はトレーをテーブルに乗せた。その上には、握りこぶし大のパンが2つ、カボチャと豆のスープ、ピクルス、そしてコーヒー。スープとコーヒーからは湯気が揺らめいて立ち上っていた。
「今日は運良くいいパンが手に入ったんだ。ついでにカボチャも。」
「そうか。」
「まあ、パンはラムザが買ってきたから高くついたんだけど。値切って来たとは言ってるが、あいつのことだからな。どうなんだか。」
「ラムザには、身内が戦を引き起こしているという負い目があるだろうからな。仕方あるまい。」
「はっ!それで今度は俺たちにとばっちりか。ったく。」
「我々は金銭に困ってるわけでもない。大目に見てやれ。」
アグリアスは話しながらもどこか上の空だった。部屋には既にスープの香りが充満している。彼女の視線を追って窓を見ると、雨粒が付き始めていた。
「食わないのか?今日のは自信作なんだけどな。」
「いや…すまない。食欲がないんだ。」
「無理にでも食わないと。持たないぜ。」
「ああ…。」
アグリアスは小さく俯いた。唇がわずかに震えると、消え入りそうな声が漏れた。か細く、子供が親に謝るような声。
「今日は、…すまなかった。」
「なんだ、まだ気にしてんのか?ラムザもおっさんももういいって言ったろうに」
「そうじゃない。お前には、まだ謝ってなかったはずだ。」
「気にしちゃいねえよ。それより作ったもんを食ってくれ。どうしても食欲がないんなら、スープだけでもいい。」
「…すまない。」
アグリアスはベッドを椅子としてテーブルに向かった。俺は部屋を出るか一瞬迷ったが、彼女が食べ終わるのを待つことにする。ドアを閉じ、椅子に腰掛けた。
「美味しい。」
「どーも。」
たっぷり15分はかかっただろうか。結局、アグリアスはスープを飲み干したが、あとはピクルスを少し齧っただけだった。窓の水滴が、別の水滴とくっついては滑り落ちている。
「もういいのか?」
「ああ…。」
そう言うと彼女は少し肩をすくめる。
「やれやれ。パン残しちまって。ラムザになんて言おうかね。」
俺はトレーを手に取ろうと手を伸ばした。しかし、俺の手に触れたのは、剣ダコで厚くなった手だった。
「…少し、いいか?」


事の発端は、今日の昼過ぎにモンスターと遭遇したことだ。普通なら手こずるような相手ではないが、足場の悪い地形と悪天候が災いし、俺たちは思わぬ苦戦を強いられた。モンスターは図ってか図らずか前後から迫り、本来は後衛のムスタディオが集中攻撃を浴びて倒れるに至る。危うくクリスタル化するところだったが、ラムザはとっさの判断でムスタディオを助けた。しかしラムザにとって誤算だったのは、アグリアスがその場を守るのではなく、単身で前に出てしまったことだ。結果、アグリアスはボムの自爆の直撃を食らってしまう。グレネイドがさらに自爆をする直前に、俺がアグリアスのオイル状態を解消。ほぼ同時に雷神シドが遠距離からの聖剣技で薙ぎ払い、何とか事なきを得たのだった。
「…何をしてるんだろうな、私は…。」
雨はさらに強くなっていた。地面を叩く音が耳障りなほどだ。
俺はアグリアスの隣に腰掛けて、彼女の話を聞いていた。
「…結局、話が見えねーよ。そのことはもういいって言ったろう?」
沈黙。
「あのなあ、それだけなら俺は戻るぞ。」
アグリアスは強く首を振った。俺はわざとらしくため息をつく。いったい彼女は何を言いたいのか?
「…第一、何で俺なんだ?ラムザなりおっさんなりのほうがこういう話は向いてんじゃねえのか?」
「お前は、」
「あ?」
俯いたまま発したアグリアスの言葉は、思いのほか強い語調だった。
「お前は何故ラムザについてきている?異端者の一味扱いまでされて、何故?」
痛いところをついた質問だった。そのことについては普段考えないようにしていたからだ。詰まるところ、俺たちが異端者になってしまった責任はどこにあるか?俺たちは誰の正義感の犠牲なのか?
「…あの時、俺は本当はもう逃げようとしてたんだよ。」
アグリアスは顔をこちらに向けた。
「ただ、たまたまその日が食事当番で、最後の晩餐にと思ってたら…」
「真面目に答えてくれ!」
剣幕に俺は一瞬怯んだ。アグリアスはシーツを握り締め、肩を震わせている。
「真面目じゃない?どういう意味だ?」
「本当にそうなら、私たちの首を手土産に教会に行けばいいことだ。」
「…へえ、見直した。そういう発想ができるとは思ってなかったな。」
「ラッド!!」
アグリアスは立ち上がって俺を見下ろした。どうやら本気で怒っているようだった。部屋にただひとつの照明が、薄暗く彼女の顔を照らす。彼女は、泣いていた。そして、雪崩のように言葉を繋いだ。
「私は何ひとつオルランドゥ伯に及ばないんだッ!技量も!精神も!何もかもッ!どれだけ剣を振っても、伯の背中すら見えない!あまつさえ、焦りに駆られて、あんな、あんな…無様な!伯がいるのに、私がいて何になる!?私は、私は…、もう…剣を持つ手が…重、く、て……もう…」
そこまでだった。彼女は泣き崩れ、最後まで言葉を吐き出すことは出来なかった。
この女騎士は、オルランドゥ伯と言う圧倒的な戦士が現れたことで、ここにいる意義を見失っていたということか。彼女は、自分がラムザをどれだけ救ったのかに気付いていないのだ。罪の意識から逃げ続けたラムザを正面から信じたことが、どれだけ奴を勇気付けたことだろう。だが、それを俺の口から伝えることはいくらなんでも無粋に過ぎる。
雷鳴が轟き、稲光が部屋を一瞬白く染めた。
「…お前は、ラムザとは違う。」
アグリアスは絞り出すように言った。
「いや。ここにいる誰とも違う。ムスタディオも、オルランドゥ伯も、私も、みんなラムザが持つ正義感に共鳴してここにいる。だが、お前だけは違う。何故だ?何故お前はここにいるんだ?」
「あんたが俺をどんな風に見ようと勝手だが、それが何だってんだ?」
「頼む…お願いだから、教えてくれ。」
「あんたが何故それを聞きたいのか納得してからだ。」
アグリアスは両手を組んで額に当て、俯いた。そして1分は黙っていただろうか。小さく頭を振り、話し始めた。雨はさらに勢いを増し、酒場からの声はかき消されていた。
「気を悪くするかもしれないが…」
「言えよ。今更隠されるほうが気分悪い。」
アグリアスは小さく深呼吸すると、背筋を伸ばして俺に対した。
「お前は、ガフガリオンに似ている。」
「…まあ、あの人にはそれなりに世話になったからな。」
「違う。」
「え?」
俺は顔を上げた。
「いや…違うというのもおかしい気がする。ガフガリオンは間違いなく不実だった。その奥に幾重にも思惑を秘めていた。」
「なるほど?じゃあ俺は?」
アグリアスは独り言のように続けた。
「お前は…何と言うか、隠さないんだ。ガフガリオンのようなある種の邪悪さを持ちながら、それを私たちに隠そうとしない。…いや…これでも正しくない気がする。」
アグリアスの指摘が当たっているのか?外れているのか?その判断は俺自身にもつかない。
「ガフガリオンは、私たちを、ラムザを裏切った。そして、枢機卿のもとにいた。」
「…」
「私は、あの時、お前がラムザやムスタディオを殺すものだと思った。」
アグリアスの聡明さに驚いた。確かにそれは事実だった。もっとも、ガフガリオンには俺の裏切りは見抜かれていただろうが。
「私にはわからない。何故お前はガフガリオンを」「わかったよ。」
俺はアグリアスの声を遮った。
「ラムザにも言ってねえが、今あんたが言ったことは事実だ。そう指示されてたよ。」
「…」
「睨むなよ。正直に答えてるんだ。…コーヒー、いいか?」
アグリアスは頷いた。俺はすっかりぬるくなったコーヒーを渇いた喉に流し込んだ。
「つっても俺は末端だった。ガフガリオンの上に誰がいるかも知らなかった。」
「…本当か?」
「ああ。信じようが信じまいが構わないがね。」
「いや、信じる。」
「そりゃどーも。」
「続けてくれ。」
俺は長い息を吐いた。
「さっきの質問の答えだが、…同じだよ。」
「え?」
「俺も、あいつの正義感に引っ張られてここにいる」
アグリアスの目の色が変わった。
「な…」
「慌てなさんな。正義感に引かれてるっつっても、あんたはと逆だ。…そうだな、ムスタディオならわかるかもな。」
「え…?ど、どういう意味だ?」
「危ういんだよ。」
「危うい…?」
アグリアスにはピンと来ないようだった。無理もないか。
「ラムザの正義感は綺麗すぎるんだよ。もっとも、おかげであんたのような奴がついてくるんだがね。」
「…」
「あいつの正義を実現するにしたって、どこかで血や泥にまみれるのは避けられねえってことだ。…いつかの脱走兵みたいなこともある。そんな時、あいつみたいな奴は割り切れねえんだよ。」
「ラッド…お前、そのために…?」
アグリアスは俺の手をそっと握った。
「ああ、たぶんな。」
「…そう、か…」
沈黙。
「誰にも言うなよ。」
「え…ラムザに言わなくていいのか?」
「ラムザは…たぶんわかってるよ。わかってないならそれはそれでいい。」
「そんな…」
アグリアスは眉を寄せた。同情されるのは好きじゃなかったが、まあ彼女の同情ならありがたくもらっておいていいだろう。
「いいんだ。」俺はラムザでなく、彼女を気遣うために言った。
「ラッド…」
手を握る力が強くなった。それは剣ダコで厚くなった武人の手でありながら、目の前で涙を見せた女の手だった。アグリアスは目を合わせようとはしないが、貧弱な明かりの中でもその目が潤んでいることは見て取れた。雨の音だけが耳に響く。
「じゃ、そろそろ戻るわ」
5分近い沈黙を破ったのは俺だった。心地よい沈黙ではあったが、あまり長く浸っているわけにもいかない。
「えっ…」
アグリアスは驚いて顔を上げた。
「詰まるところ、俺はラムザが好きなんだよ。…あんたと同じでね。」
「な!?」
アグリアスは今晩最大の声をあげた。
「気の迷いは身を滅ぼすぜ?」
「ななな、何を言う!私は、そんな…」
「まあ頑張りな。目は十分あると思うぜ。」
「ちょ、ちょっと待て、どういう…」
「じゃあ」そう言って俺は部屋を出た。
ドアにもたれてため息をひとつつく。
どうせあいつらはまだくっついてねえんだし、いただいてもよかったかな?
…つくづくお人好しだな、俺も…。
まあいいさ。
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